ねーちゃんへ

 姉ちゃんが59歳で天国へ逝ってから1年2カ月経つね。本当なら今頃、還暦を過ぎて皆にからかわれて照れ笑いしていたのかな~って思います。私と言えば、まだ心の傷は癒えないままだけど何とか生かされてるよ。ねーちゃんは、肉体が無くなってラクになりましたか?

私が55年前に産まれた時から5歳年上の貴方はいて、きっとお世話をしたり嫉妬したり。妹の私に色んな感情があったのでしょうね。私はねーちゃんの喜び悲しみ苦しみを全然理解してなかった気がします。そのくせ半分が無くなってしまったような空虚感と後悔でいっぱいです。アルコール依存症の父を持ち機能不全家庭の中で喧嘩も沢山したし問題だらけだったけど、仲良し姉妹だったと思ってる。ねーちゃんはギャンブル・買い物・アルコール依存症になって生き延びて、私は摂食障害・薬物依存症になって生き延びてきたね。大変だったよね。でも老後は温泉でも入って色んな話を笑って言える関係になってるって信じてた。人生思い通りにいかないことを思い知らされた出来事だったよ。

私14からクスリ使いながらも家庭を持ったし子供も産んだけど離婚したよね。親権も手放して、どうにも止まらなくなっていった私をねーちゃんは、どう思っていたのかな。最後は実家しかいるところが無くて、使うために出て行ってヨレて帰ってを繰り返してたよね。ある日の夜、帰った時に鍵が変えられて窓に柵がハマっていたでしょ。ビックリして公衆電話からかけた時の会話は今も良く覚えてる。「部屋に入れない、どうして・・・」っていう私に「生きる自由、死ぬ自由、それを選ぶ自由がある」って言ったよね。私は「死ねってことでしょ」って切って
子供たちに電話して「ママ遠くに行くから・・もう会えないから・・」子供たちは大泣きしてた。その後、遺書を書いて9階の実家の玄関前から何度も何度も飛び降りようとしたよ。ネグレクトで育った私は実家から飛び降りて「私はいたんだ」ってママの心に一生の傷を刻みたかった。今から思うと恨みだよね・・でも、どうしてもあの時、死にきれなかったよ。突然死で先に逝った長女の元にあれほど行きたかったのに...声が聞こえたんだ。「残された2人の子供たちはどうするの?」クスリでどうにもならなくなって自殺した・・その事実を幼い子供たちに背負わすことは出来ない、「特別なことは出来なくても生きているだけでも凄いことなんじゃないのか」って初めて思えた瞬間だった。又、公衆電話から「死ねなかった・・」って言った後、直ぐ駆けつけてくれたよね。玄関の入り口でふて寝してる私に「どうしたいの?」って、私はふてぶてしく「病院に行きたい」って。その後、病院に一緒に行ってくれたし、回復施設にも一緒に面接に行って本を2冊買ってくれたよね。一緒に使ってた彼が出所して、私に会いに来たときに欲求がかなり入って電話した時に「ねーちゃん、使わなかったよ・・褒めて・・」って催促したら「どんな困難があっても逃げない貴方は私の誇りだ」って言ってくれたこと一生忘れない言葉です。。

ねーちゃん、あの時に買った本がきっかけで3月で自助グループ、回復施設に繋がって20年経ったよ。あの時ずっと使っていた東京を離れて施設に行ったよね。私は私でその後、施設で知り合った人と再使用して大変だったけど…そっちはそっちで問題児だった私がいなくなってママとの関係がどんどん悪くなっていったのを知ってたよ。私がクスリで狂っていた時はあんなにママと団結していたのにね。私だけ東京離れて大きな流れに繋がることが出来たけど、ママやねーちゃんは繋がることを選ばなかった。


ねーちゃんの人生ってどうだったんだろうって思う。私が17歳の時に手首深く切って救急車で運ばれていったでしょ。その後、結婚して子供産んでアルコール依存症になって。ギャンブル・買い物で借金して首吊ったりオーバードーズで失敗したり、最後は車に排気ガス入れて失敗。あの時は入院して後遺症が残るかもって心配してた。
借金はママが全額返済してくれたけど、結局テレクラで知り合った男と出て行ってさ・・子供を置いて行ったことで私はずいぶん責めてた。それっきり疎遠になっていったね
。でも連絡を取らない間に自己破産して朝からお豆腐屋さんで働いて前向きに頑張ってるのは噂で聞いてた。
その間に私の薬物はどんどん深みにはまっていくわけだけど・・そんな私をみて、長女であるねーちゃんはしっかりしなきゃって思ったのかな?


おかげさまで今は回復施設のお手伝いや、自助グループにもちゃんとつながってるよ。なのに、身内のねーちゃんの病気の進行をどうすることもできなかった。なんの力にもなれず私の中で無力感だけが残ります。私が何とかできたことではないのは頭ではわかってはいるけど、あの時あーいえば、こうしておけば、あなたを失うことはなかったのではないか。今更どうにもならないことをグルグル考えて自分を責め続けてしまいます。リセットしたくなって又、クスリを使いたくなるけど、それを一番悲しむのはねーちゃんだからさ。だからそのエネルギーを新しいグループを立ち上げるための力にしたよ。きっと又、褒めてくれるよね!
私さ、おしゃれでカッコいい、ねーちゃんのことが自慢だったし、大好きだったし。これからもずっと大好きだよ。。

この悲しみの塊がゆっくり溶けていって、私の人生の一場面になりますように…どんなクスリより、日にち薬が1番効きそうだね。
これを機会に少しづつ前を向いて歩いて行くよ!今までお姉ちゃんでいてくれてありがとう。

沢山の愛をありがとう。